朝から小雪が降る天気で視界もない。
GPSがあるので,調査地の山頂カルデラ(4100m)へ行くことも可能な天気。
Chitinaで3日間,飛行機待ちをしてしまったため,Paulに予定より高いところに降ろしてもらったことを差し引いてももう予備日を持っていない。
迷うところだ。
ジリジリしながらも,キャンプ2(3750m)での停滞を決めた。
この辺りはあまり大きなクレバスがないことは知っているが,ガスの中進めることはリスキーとのDanの判断。
ガスが濃く,ロープを結んだ相手が見えなくなる状況でもあったので,ここは納得。
午後になり,すこしだが視界も出てきた。
このまま回復に向かう保証はないし,もっと天候は悪化するかも知れない。
だが,今日中に上へ向かうのなら,ぼちぼち準備をはじめて出るしかない。
どうせ白夜で暗くはならないので天気が良ければ真夜中に歩くのもありだが,天候が不安定な中向かい,天候悪化+気温の低下,両方のリスクを抱えることはしたくはない。
Danに行かない?と提案。
Danからはもし天気がすっきり回復したら行くけれど,今はクレバスが怖いからダメ,もう少し天気待ちするとの返答。
今行かなければ,今日上がる可能性はないっしょ。
天気待ち,イコール行かないことを意味するのに,天気待ちと言うので少しいらだった。
行くなら今。今行かないなら無し。選択肢はこの2つしかないのだ。
ガスの中,クレバスに落ちるリスクは,この場所ではとても低いけれど,ゼロではないのでDanの今行かないという意見は納得出来る。
だが,その後天気が回復したら行けるという含みはないでしょ。
念をおして聞くと,つまりは今日はもう行くつもりはないとのこと。
オーケー。
ところがところが,夕方17時頃,すっきり晴れてしまった!
ガスに隠れていたピーク,Mt. Zanettiもはっきり見える。
完全に結果論だが,さっき出ていれば,上に行けてた。
フィールドアシスタントのAndyとFrankは偵察がてら上へ行ってくる,と早々に散歩に出発。
私も行きたい!一度高いところへ行くのは高所順応の上でとても重要なのだ。
彼等のトレースをたどるのであれば,ロープなしでも構わないだろう。
そう思ってDanに言うと,ロープなしで行かせるのはイヤなので,行くならオレも一緒に行く,との返答。
というわけでDanとロープを結び,上へ。
山頂カルデラの脇にある,ノースクレーターまで行きたかったのだが,予想以上に寒く,Danが充分な防寒具を持ってきていなかったのでAndyとFrankに追いつく前に引き返しを決めた。折り返し点の標高は4000m。高所順応のためには充分な登りだった。
小さくではあるが,テントが見えた。よくみると,写真の中にも点として見えている。
当然下りはロープはずすでしょ,と思ったら,Danちゃん,ダメとの返事。
登りでクレバスがないことはわかっているのに,ダメか。
一昨日と判断がぶれているなー。
ロープを結んだまま,トレースを忠実にたどってキャンプへ戻った。
AndyとFrankは,やっぱりロープはずして,しかも登りのトレースから結構はずれて滑ってきた。
今回の隊はああしろ,こうしろ,という絶対的な安全責任者がおらず,皆自分の知識,経験をもとに各自で判断して行動していた。
Danの判断自体は出来るだけリスクを低くしようという意図がはっきりしているので,スキーの自由度が減ったり,ロープを結ぶ相手に行動を制約されるというデメリットがあっても納得出来る。だが,隊の中で判断が異なる時,それぞれにまかせてしまうのはちょっと納得出来なかった。
もっとも,今日の場合はAndy,Frankとは別々に行動していたので,一番の経験者であるDanが指示を出せる状況ではなかったのだが。
まだ私は仕事のスタートラインにも立てていない。
明日こそ,上へ行くぞ!