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2006,06,24, Saturday
チェーンソーを使うためには発電機を動かす必要がある。
しかし,発電機はDanの電磁場観測に影響を及ぼす。 この日はDanとの兼ね合いもあり,発電機を使わずに雪氷コアの掘削。 今回は大規模な掘削は行わず,ドリルは手回し式なので問題なし。 欲しいコアは,去年からの1年間の積雪をカバーするコアと,その前の年,3年分をカバーするコア。 1本目のコアは最低深さ7mまで,2本目のコアは深さ22mまで掘る必要あり。 持ってきたドリルで掘れるコアは19mまでなので,2本目は少なくとも3m掘り下げた後に,掘りはじめなければならない。 掘り出したコアを処理している間に直接日があたって融けてしまうのがイヤなので,掘削準備をしている間,アシスタントの二人に日陰を作ってもらった。 気温は氷点下でも,日があたるとすぐにあたたかくなるのだ。 また,ドリルが日なたであたたまると付着した雪や氷が融ける。 そのドリルを掘削孔に下ろすと,中は冷たいので掘ったコアもろとも氷ついてしまい,コアの取り出しに苦労するはめになる。 ちょっとのことだけれど,とても重要。 日除けを作ってもらった1本目のコアの掘削場。 こういう作業,今回のアシスタントはすごく慣れている。 ちょっと風が強く,意外と面倒な仕事だったのだが,その場でいろいろ工夫して充分な日除けを作ってくれた。 私は「日陰を作って」の指示だけで済み,大助かり。 そんなアシスタント等の昼食風景。 ポテトチップやクラッカー,パン,ピーナッツバター,手軽に食べられるもので済ます。 水分だけはたっぷり摂る。 2本目のコアはタワーを掘っているトレンチ内での掘削。 掘削場を整えた上でしばし休憩するアシスタントのFrank。 結局時間切れで全部は掘削しきれず,残りは明日へ。 [撮影:Dan Solie] この日は私が料理。良い気分転換にもなる。 フェアバンクスで見つけたきしめんと,野菜炒めを作った。 ガチガチに凍った野菜を手っ取り早く溶かして食べられるようにするには圧力鍋が一番。 ちょっと水を入れて調理。 きしめんも圧力鍋でゆでた。気圧が低いので普通の鍋では温度が充分高くなる前に沸騰してしまうのだ。 足元にお醤油あるの,わかるかな? 日本人のこだわり。 *** 正直,朝から体調が悪く,きつい1日だった。 忙しくてみんな料理にも手が回らない。 ↓ クラッカーやクッキー等乾物中心の食事 ↓ あまり食べられない,体調悪化 の悪循環に入りかけていた。 自分で作って,がっつり食べて,切れかけていた気持ちとパワーをつないだ。 短期の勝負だからこそ,食事や睡眠等,足元はしっかり整えなければいけない。 私がコケたら,替わりはいない。 気持ちばっかりが急いて,大事なことがおろそかになっていた。 休むのも,食べるのも,フィールド調査では大事な仕事なのだ。 |
2006,06,23, Friday
前日,倒れないでいてくれた積雪深観測タワーを無事発見出来た興奮からか,朝早くに目が覚めた。
朝5時,気温は-23.7℃。 思い立って日本の友人に電話。 きっといい仕事が出来る。 その興奮を伝えたかった。 *** さて,本格的な孔掘りのはじまり。 タワーの底のデータロガーは足下6.5mの深さにある。 ランゲル山では積もった雪はほとんど融けない。 深いところにある雪は,上に積もった雪の重みでどんどん押し固められていく。 2mも掘ると,カチカチでスコップでは歯が立たなくなってくる。 そこで使うのが,チェーンソー。 電動チェーンソーを持ち込んだ。 固くなってからは雪をブロック状に切り出していく。 そして搬出路からそりでひっぱりあげてもらう。 深くなるに連れて,雪はどんどん固くなるし,搬出路も拡張しなければならない。 表面で1m掘るのと,3mまで掘り進んでからの1mでは掘るのでは大違い。 掘れば掘るほど大変になっていく。 フィールドアシスタントのFrankが鬼のような働きっぷり。 私が息を切らせながら切り出したブロックを,あっという間に上に運び上げてしまう。 標高4000m上がりたてで,低所と変わらない運動量を見せてくれた。 信じられない男だ。 Andyは彼のことをDigging Machineと呼んでいた。 言いえて妙。 ちなみに,雪氷学では,積もって1年間経っていないものを雪,1年以上経過したものをフィルンと呼ぶ。 フィルン(あるいは雪)の通気性がなくなるとようやく氷になる。 今回掘ったのは積もってまだ1年間経っていないので雪である。 |
2006,06,22, Thursday
私の最優先の仕事は去年しかけた積雪深観測用タワーの掘り出し。
*** [撮影:2005年6月7日] タワーの高さは約5m。15cm毎に,計32本の温度センサーが配してある。 2005年6月にこのタワーを設置した。 ランゲル山では1年間で7m前後の雪が積もる。そして積もった雪はほとんど融けない。 雪が積もって,温度センサーが雪に覆われると,1日の中での温度変化が急に小さくなる。 その変化から,いつどのセンサーが雪に覆われたかを調べようというアイデア。 ホントは5mよりももっと高いタワーを設置したかったのだけれど,あまり高いとタワーは不安定になる。 また,着雪で傾いて倒れるかも知れない。この高さが妥協点だった。 当然,7m前後の雪が積もるから,今年はタワーの場所はわからなくなる。 タワーのあるあたりの氷河は1年間で10m程度流れるから,周りの景色やGPSからどこにタワーをあるのか絞り込むのは難しい。 そこで雪崩埋没者捜索用のビーコンをタワーに取り付けておいた。 通常の電池では1年間持たないので,特別な増設バッテリーを取り付けた。 *** さて,ここまでが去年の話。 山頂カルデラの雪面には全くタワーの痕跡はなし。 やっぱり全部埋まっちゃったか。。。 今年は ■タワーが見つからなかったら,来た意味がない。 ■タワーが倒れてしまっていたら,来た意味がない。 ■タワーの底にあるデータロガーが掘り出せなければ来た意味がない。 ■データロガーを掘り出しても,きちんとデータが取れていなければ来た意味がない。 というプレッシャー。 それぞれについてはきっと大丈夫だという自信はあるのだけれど,全部大丈夫か?と問われると,ちょっと自信なし。 そしてもちろん,一つでも欠けていたらダメなのだ。 ドキドキの宝探しのはじまり。 続き▽ |
2006,06,21, Wednesday
昨日の夕方からの晴れは,朝起きると吹雪に変わっていた。
ルートの偵察が出来たので昨日の午前中と同程度の視界があれば行く気だったが,風が前日よりも強い。 やむなくキャンプ2(3750m)での停滞決定。 停滞中はお腹が減る。 登っている間はさして気にならないのだけれど,じっとしていると空腹が気になって仕方がない。 お楽しみな食べ物のほとんどは重いので直接山頂に運んでもらった。 今持っている中ではとっておきのビーフジャーキーに手を出した。 短波ラジオを聞きつつ好天を待った。 あせりはあるが,天気はどうにも出来ない。 外国でラジオ深夜便を聴くと,すごく落ち着く。 断片的なニュースの組み合わせから,サッカー,ワールドカップ,クロアチア戦は引き分けだったこと,決勝トーナメント進出には最低でもブラジルに2点差をつけて勝たなければならないことを知った。 続き▽ |